「I come with the rain 」見てきましたっ! [映画やドラマのこと]
いよいよ梅雨が始まりました。
たんぼに水が入り、田植えも終わって、雨が降ればあちらこちらでかえるが一斉に鳴き始めます。
一面の水鏡とうつくしい緑。今のこの時期にしか見られない最高の景色です。
トラン・アン・ユン監督の作品はどれも、「水」が重要な役割をもっています。
「I come with the rain」もまさにタイトルのとおり、雨や水がふんだんに出てきました。
水曜日に映画を観て、終わってすぐの感想は、「もう体中ズキズキ痛くてたまらない~」 でした。
でもどういうわけか、日ごとに変化して、
今はシャワーしたあとのようなすっきりした気分だけが残りました。
全編通して、これでもかというぐらい傷ついた肉体と痛みをこらえる姿がでてきますが、
「からだの痛み」は同時に「心の痛み」でもあります。
水や泥や美しい緑がメンタルな部分の癒しの象徴になっています。
一方で、キリストや十字架を暗示するものがいろいろ出てくるのですが、
かといって宗教性は全くといっていいほどありません。
この映画の中で一番好きなのは、深手を負ったシタオがミンダナオの自然の中で再生するシーンですが、
キリストの復活のような「奇跡」ではなくて、
動物が自ら泥の中にはいって傷を治したりするのと似ています。
キリストの受難は究極の「痛み」ですし、
たしかに全人類の「罪」と「痛み」をひとりで引き受けて磔刑に処せられたのですが、
なぜ十字架を出さなければいけなかったのか私にはよくわかりませんでした。
日本向けポスターもレッドカーペットも十字架でしたね。
ストーリーには全く関係ありませんが、映画を見ながら思い出してしまったものが。
チャン・イーモウの初期の作品に「紅い高粱(こうりゃん)」というのがあります。
そのなかで、中国に進出して来た日本人が反抗する中国人をつかまえて、
みせしめにひどいことをするのです。
日頃牛などを捌(さば)いている(お肉屋さん?)中国人に、
なかまの頭の皮を剥がさせるという残酷なシーンです。
捌くのが牛や豚じゃなくて人間だったらそれはもう犯罪になる というのはあたりまえのことなんですが、
私たちは何の感慨もなく動物のお肉を食べたり、
牛の皮を剥いでつくったものを普段なにげなく使ってるんだなとか、
考えだしたらきりがなくて……
とにかく「I come~」はそれぞれのひとにいろいろな思いを喚起させる映画です。
とまあ、かなり重い内容ではありましたが、
映像はどこをとってもすばらしく、
ジョシュをはじめ美しい男の人たちがいっぱいでてきて、しかもしょっちゅう上半身裸になるわで、
それぞれの俳優さんのファンにとってはたぶん垂涎もののショット満載でした。
木村拓哉はキムタクとはまったく違った新たな面を見せていて、けっこう感動してしまいました。
でも日本人の役なのに「なんで シタオ というへんな名前なのか」 気になって気になって。
イ・ビョンホンは安っぽいチンピラの親分という感じを実にうまく出していました。
自分が叩きのめした子分の血でつるっとすべったりもします。
鍛えた腹筋より、すごい柄のシャツのほうについ目がいってしまいました。
ショーン・ユーの逆走シーンなどは
「インファナルアフェア」を観ているようで
束の間の息抜きになりました。
監督は、奥さんであるトラン・ヌー・イエン・ケーを
もっとも美しくみせる俳優や女優を意図的に選んでいるように思えました。
などなど、その他つっこみどころもたくさんありますが、ネタバレになりそうなので。
とにかく、「天使と悪魔」が文句なしに楽しめるわかりやすい娯楽作品だとしたら、
こちらはもっとメンタルな部分、深層心理にぐいぐいとくいこんでくる映画です。
おとなりに座ってた方、まちがってもポップコーン片手に観る映画じゃありませんわよっ!
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